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#01 internal affair
「娘に、あんた、なにをしたが……!」
玄関先に金切り声が響く。
金切りといっても金属を切っていったいどんな音がするのかを少年は知らない、しかし小学校の頃クラスの目立ちたがりが黒板を引っ掻いたあの手の音ならば記憶している。
家庭の事情で周囲の同情を寄せがちな彼は注意深く争いごとの類を避けた。回避の仕方を知らぬ時分は、学校に一人は存在する厳格な女教師にしばし目をつけられた。いさかいの原因を追求せず、片方を断罪するたぐいの。
ヒステリックな言い方なんかそっくりおんなじだ。
と少年は思う。
母親が生きていたら同じ世代だったろう女性が自分に激高するのを目の前にしても。
事と次第によっては恨みを買い下手をすれば刺されかねないな、と悪い想像を膨らませてみようとも、動揺のしようが少年にはなかった。
「正直にゆいなさいね。あの子、ずっと部屋閉じこもって出てこんのよ。わたしに口も利かんの。いままで一度やってこんなことなかったがに。娘は。娘は……」
真に揺さぶれるのは少年がいまだ知らぬ、恋。
生まれて初めての恋のみ、だった。
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