悲運の将軍

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これは個人的な都合だが、今月の頭に、母親を亡くしたばかりだった。 その母親とは訳あって離れていて、完全にすれ違ったままで永遠の別れを向かえてしまった。 勿論歳が六十なんてことはないけれど、そういう自分の状況下で年上の女性からの頼みとくれば、無下に断れない。 正直、深夜に面倒な話など、自分の相棒(モモ)だけにしておいて欲しいけれど。 『……分かりました。 話してください。 何かお手伝い出来ることがあるなら、協力させていただきます』 『……ほんと、ありがと! やっぱり私が見込んだだけあるわー頼もしい。 あ、私普段はこの子の意識下に潜んでるんだけど、この子に()いてからもう七年になるし。 この子の目を通してだけど、貴方達のことはちゃんとリサーチ済みだからね』 それだけ前置きをして、彼女こと英将アイコは滔々(とうとう)と語りだした。 ……当時は、現ウェスター国王であるケイゾウのお祖父様でいらっしゃるイクゾウ様の時代。 今みたく戦師という制度ではなく、国王を守護していたのは二人の将軍と将軍率いる精鋭部隊(チーム)だった。 始めは部隊の一兵士だった彼女だけれど、めきめき頭角をあらわして、やがて将軍になる。 ちなみに彼女を突き動かした力の源は、彼女いわく、『自慢のダーリンに釣り合う自分でいたかったから』だそうだ、御馳走様。 彼女こと英将アイコは、エイエイオーチームを。 もう一人の将軍、剛将ユウゼンはレッツゴーチームを率いていた。 二人の将軍をあわせて『YOU&I』などと言われていたらしい。 ……このダジャレセンス……ウェスター国の王の血筋に代々受け継がれたものなのかもしれない。 王様もケイゾウもこういったダジャレが大好物であることを、近いところから見てきた自分はよく知っている。 それはさておき、そのアイコさん(←彼女の呼び方はこれでいくことにする)、『自慢のダーリン』こと彼氏さんとはラブラブだったそうだが、彼氏は鈍感で彼女は意地っ張りという、非常に発展しにくいカップルだったそうで。 さらにアイコさんには、厄介な友人がいたそうだ。 幼少の頃から、何かと目をかけてきたつもりだったそうなのだが、その引きこもりがちの子の名前をマイカという。
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