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……ああ、自分は死んでしまったのか。
沢山苦しんだというのに、最後は驚くほどに呆気なかった。正直な感想が『こんなものか』である。 こんなことになるのなら。 あの時にあのような喧嘩など、するべきではなかった。
しかし、しかしだ。
だからといって、殺される覚えなど自分には毛頭ない。 逆に、彼女を殺したいくらいの思いをさんざんに味わわされてきたというのに。
どうして、このようなことになってしまったのか……人生これからだ、という時であった。彼女さえいなければ、事は順風満帆に進んでいた。 自分の長年の努力が実を結び、仕事の面でも昇進をして、『将軍』の地位を授かっていた。 恋愛の面でも結婚の約束までした、大好きな彼氏がいた。……それなのに……!
『悲観に暮れていらっしゃるところ、失礼いたします』
自分の真ん前に突然、趣味の悪い柄のネクタイを締めた、スーツ姿の眼鏡の男性が現れた。
『ああ、すみません、挨拶が遅れてしまいました。 私、神の御使い、即ち天使にございます』
……どこぞやの営業サラリーマンのような格好をした自称天使の彼は、理解が追いつかないこちらにお構いなく喋り続ける。
『実はですねぇ……困ったことが起こってしまいまして。 本来であるならば、貴女を死後の世界にお連れするのが常なのですが、それが叶わなくなってしまったのですよ……噛み砕いて分かりやすく説明させていただきますと。 誠に遺憾ではございますが、貴女は。
成仏なさることが出来ません』
……言っている言葉は分かるのだが、言われている意味が分からない。 とりあえず、だからどうであるのか、ということを説明して貰わないと……。
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