悲運の将軍

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「なんかさあ……モモ姉、記憶戻らない方がよくない? 過去を失うのは確かに辛いことだとは思うよ。 だけど、戻ったら戻ったで可哀想すぎない? 分かんないけどえげつないもん、見たんだろ。 ……その幽霊にやられちゃったお父さんお母さん、とかだったら……どうすんだよ?」 イサキが心配げに言ってきた。 幽霊は、例外があるかどうかは不明だけれど、一応襲う対象は『女の子限定』らしいから、その可能性は低いとは思うけれど……それとはまた別の事情で、モモの記憶を戻さなければならなくなっている。 「ん、まあ話聞けよ。 我ながら脱線しまくった……わり、そのオバサン霊とのご対面の話に戻すな」 ***** 『……ああ、そういえばあの参謀さんとそんな話してたもんね。 大分前に一度だけだったけど、ちゃんと覚えてたんだ』 オバサンinモモは、凄い凄い、と手を叩いてみせたけど、挑発されているようにしか感じなかった。 『聞く耳、持たねえよ!』 右手で空を切り裂くようにして威嚇する。 それでもオバサンは、微動だにしなかった。 まるで、自分が攻撃される事は無い、と悟っているように。 『とりあえず、ちゃんと話、聞こうか? たしかにこの子の悪夢の主原因は私だけど、断じてその事件の犯人じゃないの。 むしろ私はそのなんだから! 後でターちゃんにでも聞いてみなさいよ、イッちゃんにだって……て、そっか今は駄目か、三年前に意識不明になったまま起きてないもんね。 とにかく! 『かつてのエイエイオーチームのリーダーこと英将アイコ』、それが私!』 『……すみません……。 失礼しました』 言いたいことはいろいろあったけれど、とりあえず右手を元に戻して引いた。 『あらら。 私のこと、知ってるんだ? だいぶ昔のことなんだけど、貴方結構勉強家なのね』 彼女は、話を聞いて引いた自分は彼女のことを認識している、と感じたらしい。 『申し訳ないですが、存じません』 『……はあ?』 『でも、貴女の言葉は本当だと思ったから。 ならば、大先輩を切りつける訳にはいきませんし』 自分のその発言に、彼女は目を丸くした。 『……馬鹿正直、よね? 悪いオバサンが嘘ついてるだけかもしれないよ? なんていうか……基本、お人好しなのね』 『別に……馬鹿正直じゃないですよ。 お人好しかどうかは分かりませんけど。 ただ、貴女は大将や王様の愛称を知ってらしたから、本当かなって思っただけです』 彼女は、丸くしていた目を今度はパチパチと(しばたた)かせた。 『うん……なかなか賢いじゃない? ね、だから再度お願い。 聞いてやってくれない? 連続殺人のことまで知ってるんだから、話も早いし。 どうしても、手伝って欲しいの……!』
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