12人が本棚に入れています
本棚に追加
/253ページ
……小さい頃、マイカはいじめられっ子だったそうだ。 なんでもマイカの母親が、罪状はアイコさんも知らないけれど、無期懲役で服役中だとかで。
アイコさんは出来る範囲でマイカを庇ってきた。 一方マイカはアイコさんしか友達がいなかったから、次第にべったりになっていったらしい。
アイコさんは小さい頃は気にならなかったそうだけど、いつしかマイカの異常性に気がつき、だんだんと鬱陶しくなってきたそうだ。
何をするにも一緒にしたがる。 優しくするとつけあがる。 強く出ると卑屈になる。
とにかく相手をするのが面倒くさくなってきた、と。 一番強くそう思ったのは、アイコさんに彼氏が出来た時だそうだ。
彼氏を紹介した際、マイカはこう言ったとか。
『つまり。 私より彼氏の方が大事って言いたい訳、ね。
なによ、私が『犯罪者の子』だからって馬鹿にして。 そんなに彼氏が大事だって言うなら……いっそのこと、私が奪っちゃおうかな。
そしたら私の気持ち……アイコも絶対分かってくれるでしょうし』
……自分はこれを聞いて、アイコさんに完全に同情した。 マイカの境遇はたしかに恵まれなかったのだろうけれど、アイコさんに依存している割には一方で敵対心が強すぎる。 視野が狭すぎて、偏りすぎている。 今ではそういった『生きにくい人達』のための医療も発達してきているが、三十年以上前では今よりももっと周囲の理解もなく、マイカにとってもアイコさんにとっても辛い環境だったと推測する。
……やがてアイコさんは、将軍まで登り詰めた。 周囲の人達も、アイコさんをよく理解してくれていた。
その一方でマイカは益々面白くなかったらしく、ある日アイコさんは彼氏と派手に喧嘩をするハメになる……マイカのせいで。
なんでもマイカはアイコさんに、彼氏との子供を身籠ったの、とかなんとか言ってきたらしい。 アイコさんは、別段彼女の戯れ事を信じた訳ではなかったそうだが。
だけど念のために彼氏に尋ねてみると、『勿論そんな覚えはないがあのマイカのことだから……不可抗力のうちに何かされてるかもしれない』と彼の返事は終始煮えきらなかったそうだ。 彼とマイカも古くからの知り合いだったからではあるらしいけれど。
それが切っ掛けで、大喧嘩。 そして仲直り出来てないまま、殺された。
マイカに直接に……ちなみにナイフで胸を一突きされたらしい。 アイコさんが殺されたその事件については、城では箝口令が敷かれている、とのことだ。
思い出すのも辛いのか、アイコさんはその件については、大将に聞いてくれ、と言ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!