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楓が戻ってきた先生に紙を渡しに行く。
いつもなら明るく純粋さに満ち溢れてる生徒の、大人の顔色を伺う表情を見て、詩織先生も眉尻を下げた。
「先生。多分みかちゃんは、どうしてもピアニカがやりたかっただけなんです。怒らないであげてください。私もみかちゃんのこと、いやな気持ちにさせちゃったみたいだし、あとで謝りに行きます」
6班
16番 たどころ みか タンバリン
17番 たなか かえで トライアングル
18番 たなべ みさと ピアニカ
詩織先生は紙を受け取って確認すると、楓の頭を優しく撫でた。
楓がどこまで計算していたのかは分からない。もしかしたら誰の何の感情も加わっていない、神の定めた運命だったのかもしれない。
まあ、今となっては、楓のあれは詩織先生だから上手くいったのだとはっきり言える。教師として、生徒をただの子供として軽視しない清水先生なら恐らく無理だったはずだ。
楓は子供の純粋さを過信しすぎた大人を利用しただけ。
そして私がつまらない同情も他者の感じる苦痛も何も感じなくなったのは、人を信用出来なくなったのは、あの時からだ。
人を信じるのは難しい。
どれだけ信用に値する人間だと思っても、こちらが少し背を向けている間に舌を出して嘲笑っているかもしれないのだから。
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