気まぐれ猫と映画の日

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白一面の壁に囲まれていても、狭く窮屈に感じるスタッフルーム。 私のロッカーは部屋の隅だ。“タナベ”と書かれた、厚紙の切れ端で作られたネームプレートが付いている。 解錠音が静かな部屋に響く。中にはハンガーに掛けられた制服と鞄。片手で掻き集めるようにして取り、軽く勢いをつけてドアを閉める。 ふと、右隣のロッカーが目につく。 うちのカフェは基本2人で店をまわして、裏で店長が細々とした仕事をしている。そのため表に出るバイト同士は仲良くなりやすい。 しかし私は例外だった。 元々人と仲良くなることが苦手な私は、友達と言える人間がいない。それはこの居心地のよいバイト先でも同じだった。
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