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「お名前順にグループを作ります、楽器はクジで決めるからね」
普段なら子供たちの元気な歌声が響く音楽室が、えぇーという不服そうな声で満たされた。
子供の主体性を大切に、を教育理念に掲げる詩織先生なら、じゃあ皆グループ作ってねーとか、楽器はグループで相談して決めてねーとか、おめでたいことを言いそうなものなのに。
何かあったのかもしれない。
あるとしたら一方的に詩織先生のことを嫌ってる清水先生か。
きついパーマのかかった髪を振り乱して、よく詩織先生に文句をつけている。前に廊下でその光景を生徒たちに見られてから、あだ名はオニババだ。
あの時、生徒を子供としてしか見ていないとか、もう少し教師としての自覚を持ちなさいとか言っていた。
考え方自体は間違ってはいないと思うけれど、清水先生のミスは生徒から絶大な支持を受けている詩織先生を廊下で叱ったことだ。
子供というのは純粋だ。
嫌だと思ったものは嫌だと言う。
好きなものを否定されたら断固として否定し返す。
けれど、子供は大人が思っている以上に不純だ。
大人たちから自分がどう見られているかを知っている。
そしてそれを利用できるほど、不純なのだ。
さて、清水先生はいつこの学校からいなくなってしまうのか。
まあ、私には関係ないけど。
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