気まぐれ猫と映画の日

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先生の合図で、同じグループになった女子二人が私の前に集まってくる。 私のメンバーは田所(たどころ)美香(みか)田中(たなか)(かえで)。 お互い出席番号は近いが、特に仲が良いという訳では無い。 美香は目立ちたがりで、気は強いが子供らしく元気。 楓も明るい性格で真面目、先生に好まれるタイプだ。 どちらも詩織先生の理想の生徒像だろう。 「ピアニカ、タンバリン、トライアングルの3種類でやります。くじを引いたら、紙にグループの番号とメンバーの名前、それぞれの担当楽器を書いて先生に渡してくださいね」 トライアングルという言葉を聞いた途端、女子が近くの友人たちと顔を見合せて、きゃあきゃあと雛鳥のように騒ぎ出す。ピアニカは普段の授業でもやっているし、タンバリンも以前、授業の時にやった。けれどトライアングルは初めてだ。 新たなものというのは大人も子供も心惹かれる。それに、トライアングルの形や繊細な音の響きが女子の心を掴むのだろう。 私としてはピアノの経験を活かせるし、面倒にも巻き込まれなさそうなピアニカがいい。運良く引けるといいけれど。 「じゃあ安部くんのグループから楽器のクジを引きにきてね」 小学生らしく普段から落ち着きのない彼らは、弾かれたようにクジの箱へと飛びついた。
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