明日の話をしよう

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アドニスはイールが以前放り込まれた反省部屋に繋がれていた。 何?ここは身内専用の 仕置部屋なの? アドニスは僕が来たのを知ると跪いて迎えた。 暴れたり、大声を出して罵倒することはなく、あくまで騎士らしい立派な態度だ。 「アドニス、大丈夫?」 「カビ臭い以外なら快適です。 黙想する時間だけはたんまりあります」 そう言って彼は口元を少し緩めた。 「私はともかく、勇者殿は? 私も怒りに任せて遠慮なく剣を振るってしまいました。 私の《祝福》の《加速》についてこられたのは貴方が初めてです」 「僕の《祝福》との相性が良かったんだな。 僕の《ラリー》は剣で打ち合う能力だったみたいだよ。 だから君の攻撃に耐えたんだ。 おかげで腕が死にかけたけどね…」 「そんな…戦いには向いてない能力じゃないですか?」 「諦めてくれたらそれでいいんじゃない? 僕だって戦いたいわけじゃないからね。 実際に君だって剣を止められて動揺したろう?」 「そうですね」と彼は頷いた。 「腕は…まあ、グランス様のおかげだけど…」 「グランス様?何の話だ?」 グランス様の名前が出た事にアンバーが驚いて声を上げた。 「アンバーに言ってなかったね。 夢の中にグランス様とヴォルガ様が出てきたんだ。 僕に自分の《祝福》を譲ってくれたから腕も治ったみたい」 「…あの能力か…」かとアンバーは納得したようだが、同時に「あまり使うなよ」と警告もしてくれた。 「君は元々の魔力が少ないから下手をすれば命取りになるぞ」 「分かったよ、使わないで済むんなら使わないに越したことはないよね」 もうあんな無茶な戦い方はごめんだしね… 「貴方は随分大事にされているのですね」 僕とアンバーのやり取りにアドニスが羨ましそうにそう言った。 「そうだよ。 良いだろ?めちゃくちゃ大事にされてるぞ」 「本当に…貴方には敵いそうにないですね」 アドニスがそう言って苦笑する。 僕を殺そうとしていた青年の姿はそこになかった。
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