明日の話をしよう

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生来、彼は良い奴なのだろう。 僕とは考えの違いから敵対しただけの事だ。 彼はアンバーに「私はどうなりますか?」と尋ねた。 「どうなると思うかね?」 逆にそう返すアンバーは意地悪だ。 「命を持って償ってもらおうか?」 また、そういう魔王みたいなことを言う…柄でもないくせに… 「あまり意地悪するなよ」と僕が肘でつつくとアンバーは肩を竦めながら答えた。 「終身刑だ。 勇者のために働いていただくとしよう… そういうことでよろしいか、勇者よ?」 アンバーの言葉にアドニスが固まる。 彼ははっと我に返ると、みるみる顔が赤く染った。 「そんなぬるい罰で済まされることではないだろう! ふざけているのか!!」 「お前こそふざけてるのか? この勇者の従者はそんじょそこらの人間に務まるほどぬるい仕事ではないぞ」 どういうことよ… 「彼には常識は一切通用しないからな。 この世界のルールは知らないし、怒っても無駄だし、分からないくせに何にでも首を突っ込むぞ。 下手に目を離せば死にかけるからな! 赤ん坊の世話をするより大変だぞ!」 「それ本人の前で言う?」 「おや、自覚がなかったのか?」 「もしかしてさっきのペトラの事気にしてるの?」 僕がそう尋ねると、アンバーは小さい声で「…してる」と答えた。 アンバーは咳払いで誤魔化したが、アドニスは怪訝そうな顔をしている。 「まあ、そういうことだから、後日追って沙汰を出す。 勇者に振り回される毎日を送ることになるからな、覚悟しておけ」 何だかそれが罰だとしたら腑に落ちない… アンバーは僕を無視してアドニスに向かって話を続けた。 「お前の部下たちには用はない。 勇者からの助命嘆願で、罰を与えてもう国境付近に魔法で飛ばした。 魔法使いたちはまだちょっと用があるから獄に繋いでいるが、用が無くなったらお帰り願う。 他に知りたいことはあるか?」 「…貴方は…本当にアンバー・ワイズマンなのですか…あの大賢者の…私の先祖の…」 「自分で《大賢者》などと名乗ったことは無いが、そう呼ばれていた時代もある。 もう四百年ほど昔のことだ…」 アンバーが真面目な口調で静かに答えた。 「私は子孫の恥であろうが、お前たちは私の恥だということを覚えておきなさい。 お前はまだ若い、考えを改めることを私は期待する」
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