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✩.*˚
「アドニスの事、本当に僕に預けるだけで良かったの?」
牢を後にして、彼の執務室に向かう途中にアンバーに訊いてみた。
「君も甘いと思っているのだろう?
そうだな、確かに甘い決定だ」
アンバーは自嘲するように鼻で笑った。
「でも、私は君に期待しているのだよ。
君の馬鹿は周りに感染するからね」
「ええ?酷くない?」
「これでも褒めているんだよ。
私の王子も王女達も、君にたらしこまれてしまったからね。
父親としては寂しい限りだ…
アドニスにも少し馬鹿になって欲しいね」
言い方…褒めてるそれ?
「人間として、凝り固まった考えで教育され育ったのだから、考えを変えることは難しい。
いっそ殺してしまった方が後の憂いはなくなるが、それでは何も変わらない。
私の新しい実験だ。
勇者が周りにどの程度影響を受けるか、データを取らなければね」
「研究対象が普通じゃないね。
あまり役に立つデータは取れなさそうだよ」
「それはそれで面白いだろう?」
アンバーはそう言って笑った。
どうやら少しご機嫌なようだ。
「そういえば、夢の中でグランス様から伝言を預かってるよ」
僕はまだ伝え損なっていた伝言を彼に伝えた。
「アンバーに、『君との時間は楽しかった』ってさ。
あと、僕達に頑張れよってエールをくれた。
未来を任せたよってさ」
「…そうか…ありがとうミツル」
アンバーは静かに頷いてそう言った。
長い付き合いの友人を亡くしたんだ…
顔には出ないが辛いんだろうな…
「まだ、私は頑張らないといけないようだね…」
「僕がいるだろ?元気だしなよ。
君が僕を巻き込んだんだから最後まで責任もってくれよ」
背中を叩いて慰める。
「君はしなきゃいけないことが山積みだろ?
僕も一緒にするよ。
アンバーは抱え込まないでもっと周りに頼るべきだ」
変な友情だ。
魔王と勇者で平和をめざして二人三脚なんて、そんな変な話は僕達だけだろうな…
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