明日の話をしよう

15/17
前へ
/235ページ
次へ
✩.*˚ 「アドニスの事、本当に僕に預けるだけで良かったの?」 牢を後にして、彼の執務室に向かう途中にアンバーに訊いてみた。 「君も甘いと思っているのだろう? そうだな、確かに甘い決定だ」 アンバーは自嘲するように鼻で笑った。 「でも、私は君に期待しているのだよ。 君の馬鹿は周りに感染するからね」 「ええ?酷くない?」 「これでも褒めているんだよ。 私の王子も王女達も、君にたらしこまれてしまったからね。 父親としては寂しい限りだ… アドニスにも少し馬鹿になって欲しいね」 言い方…褒めてるそれ? 「人間として、凝り固まった考えで教育され育ったのだから、考えを変えることは難しい。 いっそ殺してしまった方が後の憂いはなくなるが、それでは何も変わらない。 私の新しい実験だ。 勇者が周りにどの程度影響を受けるか、データを取らなければね」 「研究対象が普通じゃないね。 あまり役に立つデータは取れなさそうだよ」 「それはそれで面白いだろう?」 アンバーはそう言って笑った。 どうやら少しご機嫌なようだ。 「そういえば、夢の中でグランス様から伝言を預かってるよ」 僕はまだ伝え損なっていた伝言を彼に伝えた。 「アンバーに、『君との時間は楽しかった』ってさ。 あと、僕達に頑張れよってエールをくれた。 未来を任せたよってさ」 「…そうか…ありがとうミツル」 アンバーは静かに頷いてそう言った。 長い付き合いの友人を亡くしたんだ… 顔には出ないが辛いんだろうな… 「まだ、私は頑張らないといけないようだね…」 「僕がいるだろ?元気だしなよ。 君が僕を巻き込んだんだから最後まで責任もってくれよ」 背中を叩いて慰める。 「君はしなきゃいけないことが山積みだろ? 僕も一緒にするよ。 アンバーは抱え込まないでもっと周りに頼るべきだ」 変な友情だ。 魔王と勇者で平和をめざして二人三脚なんて、そんな変な話は僕達だけだろうな…
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加