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「うう、うう……」
タロウは泣いていた。
「お父さんから受け継いだ、この船を捨てないと行けないなんて……」
「そうだな。立派な前社長の船だもんな」
「……そうだよ」
「前社長も、お前の立派な決断を、見てくれてるよ」
「うう、うう……」
ジェフも片膝をついて、声をかける。
「『流星屋』の名を汚さんためにも、やりましょ」
「……うん」
「あと3分で離脱するで」
倉庫に置いてある爆薬の起爆装置をセットし戻ってきた俺に、操縦席のジェフが声をかけてきた。
タロウも最低限必要な物を背中のリュックにかき集めて来たようだ。
「準備はいいのか?」
「ええけど……」
含みを残すジェフに尋ねる。
「まだなんかあるのか?」
「大丈夫と思うんやけど」
ジェフがエンジンレバーを引いている手元を見つめながら言った。
「確実に第7ステーションを爆破するには、爆破直前までこの船のエンジンの出力を上げておいたほうがええんやけど、でけへんから……」
確かに。
この船は旧式でエンジンレバーは手動だ。人力で引いておかない限り、安全装置がはたらいて出力がゼロに戻ってしまう。
どうすれば……あっ……。
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