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俺は首にかけてあったはずしネックレスの端をレバーにかけ、もう一方をその下にある少し出っ張ったボタンにかけた。
ジェフが手を離すが、レバーは戻らない。
「これでよし」
「いいん?」
彼女の顔が浮かぶ。
「いいんだよ」
レバーにぶら下がった銀色の月がうなずくように見えた。
「3、2、1、GO!」
ジェフの言葉を合図に、タロウが手に握ったスイッチを勢いよく押した。
数秒の静寂のあと、はるか下に見える塊が膨らんだかと思うと、一気に破裂した。
「僕の船が……」
狭く暑苦しいスペーススクーターの中に、タロウの消え入りそうな声が漂う。
粉々になったステーションと俺たちの船が、数え切れないほどの流れ星になって地球に降り注いでいるのが見える。
「新年や……。日本は星降る夜やろうな」
腕時計を見ながらジェフが言う。
「僕の生活も散りました。うう…」
「タロウ、お前だけじゃないぞ。俺らも明日から無職だ」
働きづめだったし、それもいいか。
オレンジ色に輝き始めた流星を、暗闇の中で俺たちはぼーっと眺めていた。
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