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30年前、「流星屋」には世界各地の企業数百社が参入した。
しかし、費用のわりには利益は少なく、当初はものめずらしさから地球からの依頼も多かったものの年々少なくなっていき、事業開始から5年後には企業の数は10分の1まで減ってしまった。
日本をはじめとしたアジアを担当する事業者も今となってはわずか4社で、今日みたいに大晦日まで働いているのは、4社のうち従業員がたった3名の弱小企業の俺のところと、くそったれボブの貧乏会社だけだ。
「そういえば、昨日のカーライルさんの件、どうなったの?」
俺の座る操縦席の背もたれに手をかけ、船長のタロウが聞いてくる。
「新年10分前から2020個の流れ星を降らせろとか言ってたやつのことか? すぐ蹴ったよ」
アメリカに本社を置く情報企業の社長である親日家のカーライルが、新年を日本で迎えるからとびっきりの流星を降らせてほしいと頼んできたところだった。
「ええー! せっかくのボーナスなのにい!」
船内にタロウの甲高い声がこだまする。
「ばか。採掘場が休みだから珠を大量に用意できないし、それだけの量を短時間で射出できる機械なんて持ってねえだろ」
俺たちの乘る船は事業開始直後に建造された旧式の宇宙船で、1分間に30発程度しか発射できない。
といっても、アメリカを担当する大手の船でさえ、1分間で100発が限度だろう。土台無理な話だ。
次の流星の時間だ。
うーうーとうなる船長をほっておいて、依頼書の束を1枚めくり、次の座標を入力し、時間どおりに月の欠片を地球に落としていく。
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