流星屋は、今日も働かさせられる。

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「どうひたんほれ?」 「食べ終わってから喋れよ」 同僚のジェフがポテトチップスの袋を片手にやってきた。 「これか? あー、この前地球で彼女にもらった」 ジェフが目にしたのは、先週、博多に住む彼女からもらったネックレスだった。 月をモチーフにしたそれは、月の鉱物から生成した硬い灰色の鎖の先に、銀色に磨かれた三日月が2つ肩を寄せ合っている。 「ヒカルってさ、ほんと彼女のこと大好きだよね」 「うるせえよ、ばか」 ネックレスを手で隠し、ニヤつくタロウから顔をそむける。 「ひひなあ。こへはははリア充は……もぐもぐ」 「お前さ、人の話聞いてんのか?」 「おひらなんはクヒフマフかはきょほまへはははいてふんやほ」 俺の言葉を無視してジェフは食べながら喋り続ける。 「まあまあ、ここらで一息しよ。あと1時間もしたら日本も新年だよ」とタロウ。 新年か。 当初の予定ではクリスマスから正月にかけ俺たちも休みで、明日は彼女と初詣でに行くつもりだったが、タロウが金に目をくらんで急に入れてきた仕事のおかげで有無を言わさず流れてしまった。 クリスマスだけは死守し、地球で彼女のご機嫌をとっていたら、お詫びのしるしということでネックレスをペアで買わされたところだった。 「……わいらの新年っていつなんやろうなあ。」 食べ終えたジェフが、目の前に広がる青々とした地球を見ながらぼそっとつぶやく。 「……んなもんねえよ」
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