流星屋は、今日も働かさせられる。

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「35.360626 ……138.727363……」 中央のコンソールパネルに、依頼書に書かれてある座標を入力する。 「準備できた? もうすぐだよー」 「できた。いくぞ。タイムセット、30、29、28……」 日本の上空数千キロメートル。昼も夜もない宇宙空間。 「3、2、1、GO!」 パネル横の赤い四角のボタンを押す。 ドン、ドン、ドン。 小さな船内が3度ほど、小刻みに揺れた。 前方の窓ガラスの向こうを米粒のような球体が3つ、連なって落ちていく。 あと十数分後には、関東の夜空に3つの流れ星がまたたくだろう。     地球の資源に限界を認めた人類は、月に資源を求め月面上をくまなく探索した結果、有用な鉱物が地下に大量にあることを突き止めた。 各国は競って月面に基地を建設し、鉱物を我先にと掘削しはじめた。 そこで問題が起きる。 掘削で掘り起こした岩石をそのまま月面に置いておくと、掘削できる範囲が狭まってしまうし、高く積み上げようとしても重力が小さくすぐに崩れてしまう。 月以外の場所に移動させればと考えたとき、誰かが言った。 「地球に落として流れ星をつくれば、素敵では?」 地球上の人々の依頼を受け宇宙から流星をつくるのが、俺たちの仕事。 人はいつしかこの仕事を、「流星屋」と呼ぶようになった。
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