Lesson15 彼女の吐いた嘘

3/3
73人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
『ピンポーン!』  いつもの様に、約束の時間ピッタリに、玄関のチャイムが鳴った。  ドアを開けるとそこには、ふにゃりと笑う俺の可愛い子狸ちゃんの姿。  ......まぁそんな風に言ったらきっと、またしても頬をぷぅっと膨らませて怒っちゃうんだろうけれど。 「こんにちは、雄太君。  今日はまた、シュークリームを焼いて来ました」  そう言いながら手渡された紙袋の中から漂う、甘~い香り。 「いらっしゃい、六華。  うわぁ、今日のもめっちゃ美味そうじゃん!  ......早速、食っていい?」  それを聞いた彼女は、ちょっと困り顔で笑った。 「仕方ないですね。  でも今は、一個だけですよ?  お昼ご飯、食べられなくなっちゃうから」  あれから更に、半年の月日が流れた。  俺は彼女の事を、『六華』と。  そして彼女は俺の事を『雄太君』と呼ぶようになった。  俺達の関係は、すこぶる良好。  ......っていうか俺の方が、彼女にメロメロなんだけれど。  そして六華は相変わらずの天然の小悪魔っぷりで、俺を翻弄し続けている。  ......でも本人は、そんな事に気付いてすらいないワケだけだが。  三橋に言わせると、俺は彼女の尻にしっかりと敷かれているらしい。  でもそれも悪くないな、なんて俺は思っている。 「そろそろ、お昼の支度が出来るから。  雄太君、机の上、片付けておいてね?」  キッチンから、六華の声が聞こえる。  俺は了解、とだけ返事をして、こっそり三個目のシュークリームに手を伸ばした。                               ...FIN
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!