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その絶叫を聞き俺は、しばし言葉を失った。
そしてその間も彼女は涙目で、赤くなったり、青くなったりを繰り返している。
ホントこいつ、洒落になんねぇよ。
どこまで俺の事を夢中にさせたら、気が済むんだよ?
......しかし、今日の彼女の下着。
確かに可愛かったけど、あれのどこが勝負下着なんだ?
幾分疑問に思いながらも、取り敢えず当たり障りのない言葉を述べた。
「......そう......なんだ?
......イヤ、なんていうか、その。
滅茶苦茶可愛かったよ?」
すると彼女は訝しげに眉を寄せ、唇を尖らせて言った。
「さっきのあれは、勝負下着じゃありませんよ?
だってまだ、鞄の中に入ったままですもん」
やっぱりワケが、分からねぇ。
......わざわざ買って来てくれた癖に、なんで、身につけて来ないんだよ?
だから俺は、素直にその疑問を口に出してみた。
「......なんで?」
すると彼女は真っ赤な顔で、もじもじしながら答えた。
「......っていうか、先日からずっと、鞄に入れたままなんですけど。
だって私、先輩にお願いして、お泊りさせて貰おうと思ってたんです。
......だけどなかなか、タイミングが掴めなくて」
それから彼女は一瞬だけ、そろりと上目遣いで俺を見つめ、そしてまた真っ赤になって俯いてしまった。
なんて事だ。
......俺は愛しい彼女からのお誘いに、全く気付いていなかったって事か。
彼女同様、顔が赤く染まるのを感じた。
幸い六華ちゃんは俯いたままだから、それは気付かれていないと思うけれど。
だけど俺は敢えて余裕のあるフリをして、ニヤリと笑って彼女の耳元で囁いた。
「そうなんだ?
じゃあ今晩、楽しみにしてる♡」
彼女の首筋に、わざと音を立ててキスを落とした。
だってこっちはここ数日間、六華ちゃんの言動に散々振り回されたのだ。
だからこれくらいの仕返し、しても問題ねぇだろ?
すると彼女は真っ赤な顔のまま小さく悲鳴を上げ、いつもの様に凄まじい勢いで後ずさろうとした。
だけど俺はいつもの様に笑ったりはせず、彼女を腕の中に閉じ込めて、そのまま押し倒した。
「でも俺、夜までなんて待てねぇかも。
......六華ちゃん、もうちょっとだけいい?」
もし彼女が嫌だって言えば、冗談にして止めるつもりだった。
なのに彼女はぷるぷると震えながらも、潤んだ瞳で俺を見上げて、小さな......本当に小さな声で言ってくれたんだ。
「......今度は、お手柔らかにお願いします」
ホント、彼女には敵わない。
......そして結局その後も、お手柔らかになんて出来なかったのは、俺のせいだけじゃないと思う。
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