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「ママ、もういっかいよんで」
表紙が小さな指跡だらけになったアニメ絵本の「おやゆびひめ」を押し出す。
金髪にピンクドレスの愛らしいお姫様が真紅のチューリップの中に腰掛けている表紙だ。
「お母さんは明日、夜遅くまでお仕事があるから」
黙って苦笑いする母に体してお祖母ちゃんが見かねた風に顔を出して声を掛けた。
「お祖母ちゃんが代わりに読もうか?」
そもそも普段は一緒に遊んでくれるのも、ご飯を作って食べさせてくれるのも、お風呂に入れてくれるのも、夜寝る前に絵本を読んでくれるのもお祖母ちゃんの役目だ。
「いやだ」
三歳児は残酷である。
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