君からの手紙~3カ月後のロエルとリュカ

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「飾る場所、どこがいいかな⋯⋯」  真剣に考えこむロエルにリアンが訝し気に問う。 「飾る⋯⋯?」 「リアン、書も師範でしょう。リアンが書いたのは人気があるから、掛け軸にして飾りたいって、兄さんが言ってたんだよ」 「⋯⋯もう⋯いい⋯⋯」 「リアン?」  何で赤くなってるの?と、聞きかけて、後ろからぽんと肩をたたかれた。  振り返ると、目の前に深い紫の瞳があった。  ロエルの頬にサラの右手が触れて、唇と唇が軽く重ねられる。 「!!!!!」  リアンがロエルを抱え込むと同時に、サラはまたも素早く後ろに飛びのいた。 「師匠、ちゃんと言わないと伝わらないって。ロエル、手紙なら俺がいくらでも書いてやるよ」  アーモンド形の瞳がきらりと光る。  身のこなしといい、本物の猫みたいだ、とロエルは思った。 「一人去ったと思ったら、また⋯⋯!」  リアンが憎々し気につぶやいた。  ************  リュカ様  お手紙ありがとうございました。  とても嬉しいです。何回も繰り返して読みました。  おれも蒼月の皆も変わりなく元気です。  リュカの後に入ったサラも、だんだん店に慣れてきました。  おれがリュカの手紙をあまりにも喜んだせいか、時々手紙をくれます。  毎日顔を合わせているのに手紙をもらうのは、なんだか不思議な感じがします。  リュカの元気な様子がわかって、安心しました。  騎士団に入ったんですね。リュカはすごいな、と感心しました。  最初は色々大変なことが多いと思いますが、おれはリュカなら大丈夫だと信じています。  体だけは大切にしてください。  休みをもらってズアに帰ってくることができたら、好きな物をたくさん作りますね。  リュカも良かったら、また手紙をください。待っています。  王太子殿下にお会いする機会があったら、よろしくお伝えください。  ロエル  ◆◆◇◆◇◆◆  王宮の庭園の端にある四阿(あずまや)で、リュカはロエルからの手紙を読んでいた。  四阿は騎士団の詰所から近く、ちょうどいい避難場所だった。 「待っています⋯⋯か」  呟いたリュカは、思わずにっこりと微笑んだ。  さり気なくリュカの様子を窺っていた者たちが頬を染める。  しかし、その美貌は次の瞬間、わずかに曇った。  もう一度、文面をたどる。 「サラ?」  そういえば、そんな名前が先月来た手紙にもあった気がする。 「一度、帰ってみるか」  形の良い唇の端が上がり、瞳に強い意志が宿る。  脳裏には、ズアの想い人の笑顔が浮かんでいた。  リュカはその日のうちに、ロエルに向けて新たな手紙を書き始めた。
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