たった5分の違いで

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

たった5分の違いで

私は急いで家を出た。なぜなら、お腹が痛かったあまりに時間をかけてしまった。つまり私は遅刻寸前なのだ。学校に向かわなければ行けないのだ。 自分のズボンのポケットから定期券を取り出し、颯爽と改札口にそれを押す。これに乗らなければ遅刻確定の電車はあと数分で出てしまう。私は急いで階段をかけ落とした。すると誰かと衝突して私はコケてしまった。 「痛っ」 「あまり急ぐと、ろくなことはないよ」 目の前に立ち尽くす男はそう語っている。彼は全身血だらけになり、目は腫れ上がれ痛々しかった。驚いたのはそれだけではない。彼が自分の容姿に似ていたのだ。似ていたのは容姿だけじゃない、声もそうだった。 『間もなく電車が発車します。駆け込み乗車は危険ですのでご注意下さい』というアナウンスが聴こえてきた。その声に我に帰った私は階段を駆け下りる。しかし目の前で電車の扉は閉じてしまった。 「次の電車まであと5分か……」 電車時刻案内掲示板を見ながら私は呟いた。自動販売機でオレンジジュースを買い、私は椅子に腰を掛けた。しばらく待つと、耳を疑うことをアナウンスは言葉で流してきた。 『ただいま、前車の列車が脱線事故により、しばらく運転見合わせとなります。大変ご迷惑をお掛け致しますが、どうぞご了承ください』、と。 私が先ほど乗ろうとした電車が脱線事故にあったらしい。先ほどこけた階段を見上げた。あの者は一体何者だったのだろうか?そんな私の体を静かに生暖かい風が靡くのであった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!