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近藤莉乃はこの春から中学生にあがった。莉乃はこの春を境に山梨県から東京都に引っ越した。東京都とはいっても23区内ではない。だから中学校もそんなに大きいわけではなかった。
今は7月だ。だからもうクラスの誰かと友達になってもおかしくない時期だ。しかし莉乃には友達が出来なかった。背格好が悪いとか顔が悪いわけではない。ただ女の子なのに女の子が好きだから皆んなが引いてしまっていたのだろう。
クラスには今泉紀香ちゃんというスタイルがよくて頭の良い女の子がいた。キューティクルが輝いていて目がパッチリしている美人さんだ。莉乃は紀香ちゃんのことが好きでラブレターまで書いたことがある。ラブレターといってもそんなに重いものではない。『好きだから一緒に登校してほしい』とそんな内容を書いただけだ。
紀香ちゃんは莉乃と家の方角は一緒だが、通学路はまったく違う。一緒に登校するためには莉乃が遠回りをしなければいけない。だから紀香ちゃんはラブレターを読んだあと「嬉しいけど、ごめんね。家の場所違うし、莉乃ちゃんが大変でしょう」と謝った。遠回りをさせたら悪いと思って気遣って言った言葉だった。それをいいように受け取って莉乃が執拗に付きまとってしまった。紀香ちゃんは困って辟易したので担任にこっそり告げ口をした。
「あの子、女の子なのに女の子が好きみたいなんです」
「何かされたのかな?」
「手紙で一緒に登校しようって言われて、断ったんだけど、私に付いて回るんです」
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