君の瞳に星は輝く

15/19

60人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
 『夫との始まりは屈辱でした』 “夫婦のなれそめ” を 編集者に問われた蓉子は そう始めていた。  『兄の借金のカタにわたくしは   二十二も歳上の夫と結婚、   もちろん嫌でしたよ、初夜に    夫を平手打ちしたくらい、ふふ』  『ひ、平手打ちですか?!』  『そうだよ、大人しい顔して   酷いことをするだろう。   ハハハ・・・今にして思えば   傲慢この上ない、人でなし男   だったんだよ、僕は・・・。   親の顔なんか知らずに・・・   親類をタライ廻しで育ってね、   教養どころか愛も思い遣りも   身に付けたこともなく・・・   金が全てと信じていたから   戦前は無謀承知の無礼千万で   儲けることばかりを考えて   暮らしていたんだ・・・・   そんなとき、遊び仲間の妹   だった彼女に一目惚れした。   かと言ってこちらはジジィで   家柄も学もない・・・、つい   生活に困っていた彼女の兄に   ツケコんだ・・・、そんな   ところだ、ナレソメは。   結婚さえしてしまったら   貧しい暮らしをしている女   なんだから金まみれにしたら   すぐに手懐けられると思いきや』  『ねえ、そんな女をコケに   した話はないでしょ?』  『それがどうしてここまでの、   政界一の“鴛鴦夫婦”に?』   『こっちが手懐けられたんだよ   “ 尊敬出来る男になれ “    ・・・そう言われてね』 ああ・・・蓉子らしいと 僕は合点した。 ただ流されて生きるような、 そんな弱い人間ではないのだ、 蓉子という人は・・・。                                                
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加