君の瞳に星は輝く

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「また、ここに来てる」 声をかけてきたのは 空き地裏に住む蓉子。 「まあ、天文学には  うってつけの夜やけど」 気がつけば満天の星空。 「七月でも今夜は涼しいし  外のほうが気持ちいいね」 蓉子も隣に腰掛けた。 「・・・ここは静かでエエ。  ウチは賑やか過ぎるから」 「そうだね・・・慎太郎くんは  賑やかなのは苦手やから」 遠回しないい方をしてくれるけど 僕が家業を嫌っているのを 幼馴染みの蓉子は よく知ってくれていた。 小学校までは一緒だった蓉子は 師範女学校に残って勉強を 続けていた。 「君も大学で天文学をしたら  よかったのに」 進学を決めるときに 僕は言ったが、 「ウチは父が死んだでしょ?  母も身体が弱いし、  兄は遊び人でアテにならんし  早く師範女学校で教えるように  なって、稼がないとフフ」 ・・・笑ってた。 蓉子の父親は僕の通う帝国大学で 天文学の教鞭を執っていたが 五年前に急死、 残ったのは華族様から 輿入れした頼りない母親と 定職にも就かずの兄だった。
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