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「あ、ああ・・・こんばんは」
腑抜けた声を出してしまった。
「もう秋風やねぇ・・・」
少し痩せた蓉子が微笑む・・・。
「え、えっと、あの・・・・
け、結婚・・・するとか・・・」
「フフ・・・もう噂になってる?
『極道兄が妹を売った』って」
そんな皮肉な物言いは
蓉子には似合わないけど
それを言わずにおれぬ
蓉子は傷つけられていた。
黙ったままで夜になった。
それでも二人とも動けず仕舞い。
じっと星空を眺めてると
「男に生まれたかったわ。
売られるずにすむ・・・」
「・・・売るって・・・」
力ない僕の声とは反対に
「アホらしい!アホやろ?!
兄に売られる私を笑ってよ!」
蓉子らしからぬ大声で
自分を詰った。
「慎太郎くんは御両親を
嫌ってたけど、私は兄が
大嫌い❗何も出来ない、
しない母が大嫌い❗でも
逃げる手段も持たない
無能な自分が一番嫌い❗」
涙で汚れた蓉子の美しい瞳が
僕はやるせなくて
「悪ない❗君は悪くない!
悪いことなんか一つもない」
叫びながら・・・
抱き締めていた。
抱き締めながら
(親父に頼めば・・・
それくらいの金・・・ )
悪い考えが芽生えていた。
初めて聞く蓉子の泣き声・・・。
子供のように泣きじゃくる
蓉子を抱えながら・・・
(僕が親父に頼んでも
僕のすることは、あの成金と
少しも変わらんのや・・・)
・・・虚しくなった。
せめて蓉子が泣き止むまで
頭を撫でるしか
僕には出来なかった。
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