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「悠太くんっ!来週、海行こ!」
8月。
待ちに待った夏休み。
大学生になってはじめての夏休みは、普段なかなか会えない彼氏の悠太くんとたくさん会える貴重なお休みで、だから今夜の電話の途中、わたしは前のめりになって彼にそう切り出した。
のに、わたしの熱量とは裏腹に、悠太くんはこれまでと同じ口調で……どころか、心なしかテンションの下がった声で言った。
『……なんで?』
彼の話の腰を折ってしまったせいだろうか。ムスッとした顔までしてそうな悠太くんの声を聞いて、膨らんでいた期待がしゅるしゅるとしぼんでいく。
「……なんでって…意味なんてないよ。前から行きたいなぁって思ってたの。去年は受験でそれどころじゃなかったし」
『……』
「だからね、海デートしたい!」
『ん、分かった』
なけなしの勇気を奮い立たせてもう一度言うと、悠太くんは淡々と返事をして、『じゃあ、またね』と通話を終えてしまった。
これって、誘えた……よね?
あまりにもあっさり終了してしまった会話を思い返し、わたしは小さくため息をついた。
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