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◇◇◇
ゆらは歳の離れた妹だ。だけど、ゆらは俺のことを〝お兄ちゃん〟ではなく、〝波留〟と名前で呼ぶ。俺はゆらにそう呼ばれるのが、嫌だった。
初めて見たときはガリガリの猿みたいで、こんなのが女の子の姿になるなんて、ひどい冗談だと思った。だけど、三か月も経つくらいには、白くてふわふわのほっぺが可愛らしい、それこそ天使みたいな子になった。お餅みたいで、食べちゃいたいくらい可愛いと思ったな。
その柔らかくて美味しそうな頬に顔を近づけると、ミルクの甘い匂いがして、つい、唇で食んでみた。思ったより弾力はなくて、ふわっとしていた。俺と目が合って、ゆらが笑った。それが可愛くて堪らなくて、ずっと笑っていてほしいな、と子どもながらにそう思った。
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