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ある星のきれいな夜のこと、ハリスは空っぽの銀のかごをもって外に出ました。その日は星々が地に落ちる日でした。空に輝く星たちが白や赤や黄色の尾を引いて地上に降り立ちます。この美しい光景を窓の外から眺めていたハリスは星を拾いにいこうと考えました。
ライトをもって出ようかと思いましたが、あまりに明るい夜だったので銀のかごだけをもち夜の森の中を歩き回りました。
落ちてきた星たちは木々の枝にひっかかりまばゆく光って消えていきます。地に落ちた星はふわりと甘い香りをただよわせて姿を消しました。小川や泉の中に飛び込んだ星たちは、ほうっと嬉し気にためいきをつくようにとけてしまいました。
どの星たちも地上のものに触れたとたん、歓声をあげるようにして消えていきます。自分の姿が消えてしまうというのに、この地に降りてきたことを大きな喜びとともに受け入れます。
それがハリスには不思議でした。
「消えてしまうなんていやじゃないの?さびしくはないの?つらくはないの?」
ハリスがうめくようにつぶやくと、さわさわと木々が揺れて星々がまたたきました。
そらにはない
ここにはある
いきもののけはい
いきもののこえ
いきるいのち
いっしょにいきよう
いっしょにうたおう
ハリスは銀のかごをぎゅっとだきしめました。
ぼくはそんなのいやだ
いきるいきるいきる
しんでしまう
きみたちだってしんでしまう
ひかりがきえたらしんでしまう
そんなのいやだ
木の上からひとつの星がおりてきました。ハリスの顔のまわりをぐるっとまわると銀のかごの中に飛び込みました。ハリスはかごの中に飛び込んだ星をみつめます。
「今度こそ大切にする。だから、ずっとずっと一緒にいてね」
まばゆく光る星がうなづいたような気がしたので、ハリスは安心して家に戻りました。ハリスの頭上では星々がおりてきます。
赤に白に黄色に光が尾をひいて地にたどり着いたとたん、嬉しそうにまたたいて消えていきました。
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