隣の斎藤くん

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私には不思議な力があります。 それは物心ついた時から、目の前の人の未来や考えていること、時にはこの時代に生まれ落ちる前の記憶。 全部不規則に、唐突に。 目の前に鮮やかな映像として、時として音声だけの時もあって。私の意思に関係なく突然やってくるから、幼い頃の私はそれに翻弄されていました。 素直に口に出しても、周囲は理解不能という顔をして、時として子供の戯言として、最後は気味悪がって離れていきました。 でも、私の家族は全員変わり者で、私の突拍子もない発言にさして驚きませんでした。 嘘だと決めつけることもなく、私の言うことを信じてくれて、幼いながらもそれだけは救いだったのです。 「お前のひいばあさんも、そんなものが視えるって言ってたなぁ」 母方の祖父は、懐かしむようによくこう言いました。 祖父の母は神社の巫女をしていたらしく、そういう特異体質の持ち主だったようです。 隔世遺伝なのか、何なのか。 そんなことは些末なことです。 こんな能力持っていても、何の得にもなりません。 気味悪がられて、友達はほぼゼロ。年頃になって自分の奇異な能力を隠すことはできましたが、どうしてかあまり人が寄ってきません。 多分、私から人を寄せ付けない負の何かが発せられているのでしょう。 それゆえに、恐れられ、滅多に虐められることもないのも不幸中の幸いだったかもしれません。 幼い頃から一人でいることが慣れていたので、寂しさを紛らわせる方法を覚えてしまうとそこまで苦でもありません。むしろ、一度他人の輪に入った後に弾かれるほうがつらいものです。 私は何のために生まれてきたのか。 自分のことに関しては未来も過去も何も視えないのです。 本当に、意味不明なこの力。 それが初めて役立ったのは十二年前。 私の初恋の人が好きな女の子のためでした。
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