第十章 過去を乗り越えて

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 意外だけれど、玲奈は子供好きなようだ。  大学生の時に一度交際しているけれど、就職してからは誰とも付き合っていない。だから、男性との交際よりも仕事が優先かと思っていた。  でも、子供が好きなら、単に勉強することが多くて、余裕がないだけかもしれない。愛香も、働くようになると、なかなか余裕がない。  誠之とは大学の時からの交際だから結婚になったけれど、そうでなかったら、出会い自体がないような気がする……  「うん。楽しみにしてて。すっごく可愛いよ」  「分かったわ。もう出ないと駄目みたいね。  愛香、おめでとう。すごく綺麗よ。誠之と幸せになってね」  よく会っているのに、挙式の日は、どうしても、お互いに特別な気持ちになる。玲奈は、容貌に似合った優しげな笑みを浮かべながら控室を出ていった。  ウェディングプランナー以外では、両親だけ。愛香は、二人に潤んだ瞳を向けた。  「お父さん、お母さん。  今日まで、ありがとうございます。誠之と幸せになります。でも、これからも私は二人の娘です……」  言葉がつまって、涙が流れそうになる。幸せな日の、幸せな涙だ。
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