第一章 理想の恋人たち

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 ***  二人の交際は、サークルメンバー以外に報告していないけれど、段々と知られるようになった。  交際するようになってから、二人は時間を合わせて学生食堂でランチをしたり、講義のない時はキャンパスのカフェで勉強をしたりした。  穏やかな性格の二人はいつも笑顔で会話をしていて、見かけた学生が羨望の表情になるくらい和やかだった。  「二人のこと、なんて言われてるか知ってる?」  愛香が玲奈に確認されたのは、直樹と交際して半年ほど経った頃だった。  「なんて、って?」  学生同士で交際しているのは珍しくない。二人は注目されるほどの有名人ではないので、愛香は不思議そうに首を傾げた。  「あ、俺も聞いた。岸田も知ってるんだ」  「うん。工学部にも伝わっててさ」  余計に分からない。  「理想の恋人たちって言われてるんだよ」
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