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「遮ってごめん。
誰に助けられたんだろう」
「誠之。私の同級生だった誠之が心配して、傍にいてくれてたの。だから、飛び込もうとした時に止めてくれて……
私たち、それから付き合い始めて、もう少ししたら結婚するの」
愛香が結婚すると聞いて、直樹は唇を噛んだように見えた。そしてすぐに何か言うことはなかった。
でも、瞳を閉じて、顔を上に向けると深呼吸した。
「そっか……あの時、誠之が傍にいたのか……でも、良かった。愛香が大変なことにならなくて……
誠之なら……本当に真面目でいい奴だったよな……そっか、そうだよな」
自分に言い聞かせるかのような口調の直樹は、何かを諦めたのが分かった。きっと、愛香との復縁だろう。
「うん……でも、私も貴方に謝りたい。
ごめんなさい。悩んでた時にきちんと話を聞かなくて」
直樹は何度か、山口商事に入りたくないと愛香に言っていた。内定辞退を言っただけでなくて、実家に戻るとまで……あの時、驚いた愛香は、直樹から理由を聞く前に、勝手に解釈して辞退を止めていた。
彼は、社会人になることに不安なだけだろうと……
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