第十章 過去を乗り越えて

45/54

2164人が本棚に入れています
本棚に追加
/337ページ
 「ねぇ、これからどうするの?」  愛香の問いかけに、直樹は想像よりもあっさり答えてきた。  「離婚して会社辞める予定。辞めるのは書いたよね。  その後は二人で実家に帰るんだ。前に言ったことあるよね。伯父さんの会社に少し世話になろうかなって。そうするつもりだ。もう、話も通してるしね。  離婚の条件がどうなるか分からないけど、親権は俺が取れると思ってる。あいつは、薫が可愛くないからさ。  自分に似てないってのもあるけど、実は……愛香も気分が悪いかもしれないことしてるんだ」  首を傾げた。意味が分からなかった。  「薫は、愛香から名前をつけたんだ。  かおると、かおり……同じ意味の文字を使いたくて……ごめん。勝手に息子の名前に使って。  あいつも気づいてさ。余計に可愛くないんだ」  愛香は驚いたけれど、事情を聞いたら怒れないと思った。それに、命名の権利は愛香にはない。  「そうだったんだ……でも、薫くん、可愛かったから怒れないわよ」  「ありがとう。そう言ってくれて」  再会して初めて、直樹は微かな笑みを浮かべてきた。
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2164人が本棚に入れています
本棚に追加