第十章 過去を乗り越えて

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 「私、結婚するの六月なの」  愛香が言うと、直樹は少し寂しそうだったけれど、きちんと祝福を言ってくれた。  「……そっか。おめでとう。  何もするつもりはないけど、二人の幸せ祈ってるよ」  「ねぇ、誠之やみんなに会いたい?」  問われると、直樹は遠い視線になった。きっと、サークルのことを思い出しているのだろう。  「もちろん会いたいさ。鉱物研究会にいた頃って、一番幸せだったから。  でも、もう無関係にされてるだろ。それくらいは分かってる」  玲奈が激怒してOBから削除したけれど、直樹も想定していたようだ。  「結婚式と披露パーティは無理だけど、二次会に来ない?薫くんも一緒に。私、このままお別れして終わりってできない。  それに、あの子と無関係になるんでしょ。それなら、OBに復帰できるようにも頼んでみる」  一瞬、期待の表情になった直樹だけれど、首を振って断ってきた。  「いいよ。愛香にひどいことしたんだから、サークルに戻る権利ないって」  そんなことないと言おうとしたら、違う声が先に告げていた。
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