第十章 過去を乗り越えて

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 「すごいですね、彼女。  あ、田代さんと結婚してる、あの女性ですよ」  少し皮肉めいた口調で話す誠之の言葉に、直樹が溜息をついた。  「まぁね。俺に言ってきたんだ。愛香がだらしない男と一緒にいるとこ見て心配だって。  すぐに分かったよ。その男性を横取りしたいから、俺と愛香と復縁させたいんだなってね。  あいつの考えはすぐに分かったけど、それでも思惑に乗ったんだ……愛香に会って謝って……ごめん、遅いよな、今さらだったなって思ってる。  でも、まさか、俺が会う日に一緒に来てたとは……単純すぎだな」  そんな言葉を聞けば、愛香に未練のあるだろう直樹が連絡するはずだ。溜息が出る。  「面白かったですよ……」  誠之の説明を聞いた、愛香と直樹が揃って溜息をついた。どこまでも自分を正当化して、二人を(おとし)める。そんなでたらめを、どうして平然と言えるのかと思う。  「俺の正体知った時の彼女の顔。二人に見せたかったな……  彼女、大学で、俺のこと裏で笑ってたんですよ。その男って知ったら(ののし)ってきましたけど、ありきたりで笑うしかなかったですね。  最後は、一人で勝手に怒って勝手に帰っていきましたよ。  俺もこっちに戻ろうと思った時、ドーナツ店に気づいて、お子さんにって買ったんですよ」
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