第十章 過去を乗り越えて

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 ***  「田代……直樹さんと話した。  声だけだから断言できないけど、全然変わってないってほんとみたいね。ちょっとびっくりしたから」  六月の土曜日。  梅雨の季節だけれど、この日は太陽が見えている。  新婦の控室に来た玲奈が、愛香にだけ聞こえる声で言ってきた。愛香は親友に、直樹の事情を話していた。  聞いた玲奈は倫世をさらに軽蔑したようだ。そして、直樹の迂闊(うかつ)さにも怒ったけれど、愛香たちの頼みは受けてくれると言って、彼に電話連絡している。  「ありがとう。  やっぱり、すっきりした気持ちで結婚したかったから、ほんとに良かったって思ってる。  それに、直樹、いろいろ進めてるんだって。今年中には解決できたらな、って言ってたよ」  さすがに、挙式前に離婚、という言葉は使えない。  「それは当然だね。心機一転ってことか。  薫くんって、すごく可愛いんでしょ。二次会からってのが残念だけど、早く会いたいわね」
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