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母親が、ハンカチで涙を静かに拭ってくれた。
「愛香……誠之さんと幸せにね……本当に良かったわ」
直樹と辛い別れをしている。余計に今日の幸せが嬉しいようだ。
その直樹と和解したことはまだ言っていない。二人は二次会に来ないから、彼とは会わない。
説明する日が来るかは分からない。でも、一つの区切りがついたから、怒りをいつまでも持っていてほしくないと思った。
「誠之くんと支え合っていくんだぞ。
彼は本当に素晴らしい男性だ。愛香を絶対幸せにしてくれる。
でも、頼るだけでなくて、頼られるような女性になるんだぞ」
父親は感慨深そうだ。愛香は、直樹のことは後で考えようと思った。そして、挙式のことだけに気持ちを向けた。
「はい……二人の娘として恥ずかしくないように頑張ります」
ここで係員が声を掛けてきた。
「お母さま、よろしくお願いします。お父さまはこちらに」
もう少しすると、結婚式が始まる。
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