第一章 見つけた夢

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 大翔はすぐに答えないで考えた。両親も二校受験を(すす)めてくる。  珍しい進路だから、浪人になると結構厳しい。  受験に絶対はない。  「そうですね……やっぱり滑り止めあったら余裕出ますよね」  単願だと一発勝負な受験になるけど、併願なら、どちらかに合格すればいいから、気分的には楽になる程度は分かる。  「出るだろうな。あまりメジャーな学科じゃない。可能なら併願を勧める」  専門学校に行くつもりがないなら、併願は現実的な選択だと大翔でも思った。  「分かりました。東京に気になる大学ありますから、そこも受けます」  通学には少し厳しくなるけど通える距離だ。家の近所でも東京に通う人は多い。  もちろん、今でも、あの大学に入るつもりだけど、他の学校なら絶対嫌というほどでもない。  勉強を続けて、大翔の気持ちにも変化が出る。  工業デザイナーになるために大学に行くのであって、その大学に入るのが目的ではない。そう思えるようになっていた。
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