第九章 MVブランド発売

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 従姉弟(いとこ)の会話が終わって、玄関で靴を履いていると、母親の、少し(うかが)うような声が聞こえてきた。  「白井(しらい)さんと付き合って一年過ぎたんでしょ。喧嘩とかはしないの?」  「全然。俺、女性の立場を良くするために努力してる彼女のこと、すごく尊敬してる。  でも、普段の彼女はすごく可愛いんだ。年上って忘れるくらい。だから、喧嘩することなんかないね」  一目惚れだけど、彼女の頑張りを知れば知るほど、尊敬の気持ちが強くなっている。そんな大翔と和香は、言い争いもほとんどないくらいだ。  母親は、大翔の左手に視線を向けている。薬指にはシンプルな指輪。さすがに結婚したかと()けないのは分かる。  「俺は、早く結婚したいけど、デキ婚は避けたいと思ってる。  彼女のキャリアを尊重しないとね」  結婚指輪でないと(ほの)めかすと、母親は静かに返してきた。  「そんなに仲がいいの。そうなのね……」  (かす)かに感情が動いているのかもしれないから、大翔は、それ以上は会話を続けないで東京に戻った。
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