第九章 MVブランド発売

26/35
前へ
/322ページ
次へ
 ***  春になる頃に工場の改修が終わって、製造が始まった。  大翔たちは、改めて工場見学に来た。  「あ、すごい。次々できてる」  驚きの声を、先輩たちが笑いながら頷いている。  複数のラインから自分たちがデザインした商品ができあがっていく。もう、夢ではない。現実だ。  「こんなにたくさんの物を使う人がいるんですね……」  つぶやきは隣りにいる社員にも聞こえなかったけど、大翔は感動が胸に込みあげて、小さな声しか出なかった。  見飽きない光景の中に、見慣れないものがあると気づいた大翔は、チーフデザイナーに()いていた。  「あの……あれ、テレビカメラですよね」  大翔の指さす方向にみんなが視線を向けた。  「あ、ほんとだ。噂になってた取材の日だったんだ。(うつ)るかな……」  聞いた大翔は少し後ろに下がって、自分が見えなくなる位置に立っていた……
/322ページ

最初のコメントを投稿しよう!

645人が本棚に入れています
本棚に追加