第九章 MVブランド発売

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 文具のデザインができたのは、間違いなく、両親の協力があったから。()めていても、そのことは忘れていない。  「父さん、母さんには感謝してるよ。  好きなこと仕事にできたのは、二人がいいって言ってくれたからだから」  久しぶりに素直に感謝の言葉を言ったからか、受話器から(かす)かに涙をこらえる雰囲気が伝わってきた。  =いいの。  大翔が好きなこと思いきりできることが、お母さんたちには幸せだから……=  その後は年末に帰ると言って電話を終わらせた。スマホを持って大翔は溜息をついた。和香との交際に関しては、いまだに賛成をもらえる様子はない。  でも、親と決別するのはやっぱり避けたい。  (再来年……俺が二十八になったら考えるか)  大翔が入社して五年になる。この会社に入るきっかけになった新ブランドが来年発売される。その翌年だから、少し落ちついているはずだ。  MVブランドが稼働したら……いろいろと状況が動くだろう。
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