第十章 後悔しない決断

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 ***  交際二年目に大翔が和香(わか)にプレゼントしたのは、発売前のボールペンとシャープペンのセットだった。  受け取った和香はすごく喜んでくれた。  「ありがとう、大翔。すごく嬉しい。会議で見た時から、早く欲しかったのよね。チーフデザイナーが自信作って言うのが分かるわ」  「ええ。でも、俺たちも意見出してるんですよ。ブランドを象徴する商品だから、みんなの意見で作りたいって」  チーフデザイナーの先輩は、今までの自社製品のほとんどのデザインに関わっている。  大翔とは違って、最初から、文房具のデザインをしたくてこの会社に入ったと聞いた。  「みんなの意見を取り入れるなんて、すごい人ね。なかなか、人のアイディアを素直に聞ける人っていないから。  あまり会ったことないけど、そういう人がリーダーなら、MVも安心ね」  和香の言葉に大翔は嬉しくなった。デザイン課は、人数が少ないからみんな仲がいい。企画部も楽しかったけど、もっと充実している。  「あの人がチーフだから、自由にデザインできるっていうのはありますね。俺がもし、チーフになれたら、あの人みたいになりたいですね」  「本当に良かったわ。  企画部(うち)の部長は相変わらずよ。来年くらいに転勤になりそうだけど」
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