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ここで大翔は一つ息をついた。決まっていない未来の可能性で責めたいわけではない。
「俺の知ってる二人の男性ね、恋人がいたのに、横取りしたいって女性に無理に結婚させられたんだ。
どっちも離婚したよ。理由は聞いてないけど同じだと思う。
好きでない人と、何かあった時に一緒に頑張ろうなんて思えないよね」
義隆の離婚は、特に何かあったわけでないから、本当の理由は分からない。
でも直樹は、勤める会社で不祥事が起きた。
そのせいで義父が失脚した時、彼は、妻と二人で乗り越えるという気持ちになれなかったのだと思う。
「俺は誰も責めたくない。もし、失敗しても自分が決めたからって言いたい。
それに、時間が無限だって思えないんだ。そういうできごとがあったからさ。
だから、何かあってから、あの時こうすれば良かったって言いたくもないんだ」
大翔の長い話の間、両親は黙って息子の言葉を聞いていた。
「……俺が言いたいことは言ったよ。
俺、デザイン課でなんとかやれそうだし、和香と不釣り合いだって言われなくなってきたんだ」
「そうなのか?」
父親の言葉に、大翔は少し胸を張って頷いた。
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