第一章 見つけた夢

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 「大翔(ひろと)、テニス部入るのか?」  入学式で隣り合った、同じ中学出身の男子に()かれた大翔は少し考えた。  今は入学式。壇上(だんじょう)ではエラい人が挨拶している。  でも、とにかく話が長い。  しかも、三人目なのに、ほとんど同じ内容。最初は緊張して聞いていたけど、段々飽きてくるのは仕方ない。  実際、他の生徒も同じようで、(かす)かに会話の声が聞こえてきた。  大翔と友人も小声での会話だ。さすがに、いつもと同じ音量なら、体育館からつまみだされる。  眠さも誘いそうな声をBGMに、大翔は訊かれたことを考え続けた。答える前に拍手が起こったから、適当に合わせる。  みんなが拍手をしているなら大丈夫という、やっぱり適当な考えだった……  終わったかと期待した大翔の願いむなしく、さらに壇上に誰かが(あらわ)れた。  でも、意外だった。ものすごく若い男性だ。大翔たちと親の中間くらいの年齢に見える。  「誰だろ」  不思議そうに言う大翔に、横の友人も首を(かし)げた。
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