第一章 見つけた夢

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 「入学おめでとう。  私は、この高校の卒業生。君たちの先輩に当たります」  なるほどと大翔は思った。学校のOB代表らしいと。  他のエラい人よりは挨拶が短いかも、と多少期待する気持ちになった。  「……現在の私は、あるメーカーで家電製品のデザインを行ってます。  皆さんは考えたことがあるでしょうか。すべての物は誰かがデザインをしているんですよ。  服や車などは、すぐに思い浮かぶでしょうけど、それだけではありません。  皆さんが座っている椅子。私の前にある演台(えんだい)。そして、この体育館も、設計士という名前のデザイナーがデザインをしているんです。  自分のデザインが形になって、社会の一部となっていく。とても素敵なことと思いませんか……」  さっきまでとは違って、大翔は真剣に男性の挨拶を聞いていた。  すべての物は、それをデザインした人がいる。  今まで全然考えたこともなかったけど、確かに、誰かが物の形を指示しないと作ることもできない。  (すごい。自分の描いた物が実際の物になるって)  大翔の頭から、テニスという言葉は完全に消えていた。
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