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「入学おめでとう。
私は、この高校の卒業生。君たちの先輩に当たります」
なるほどと大翔は思った。学校のOB代表らしいと。
他のエラい人よりは挨拶が短いかも、と多少期待する気持ちになった。
「……現在の私は、あるメーカーで家電製品のデザインを行ってます。
皆さんは考えたことがあるでしょうか。すべての物は誰かがデザインをしているんですよ。
服や車などは、すぐに思い浮かぶでしょうけど、それだけではありません。
皆さんが座っている椅子。私の前にある演台。そして、この体育館も、設計士という名前のデザイナーがデザインをしているんです。
自分のデザインが形になって、社会の一部となっていく。とても素敵なことと思いませんか……」
さっきまでとは違って、大翔は真剣に男性の挨拶を聞いていた。
すべての物は、それをデザインした人がいる。
今まで全然考えたこともなかったけど、確かに、誰かが物の形を指示しないと作ることもできない。
(すごい。自分の描いた物が実際の物になるって)
大翔の頭から、テニスという言葉は完全に消えていた。
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