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「俺、予備校に行きたいって思うんだけど、いい?」
夕食の時の大翔の言葉に、両親は顔を見あわせた。
中学生の時にテニス部に入った大翔は、パワハラ気味の先輩と相性が悪くて半年で退部している。
その後は、母親の勧めで塾に入って、結果、ランクの高い学校に進学できている。
ものすごく皮肉な表現だと、先輩のおかげで成績が伸びたわけだ。もちろん、大翔も両親もまったく感謝していないけど……
でも、高校に合格した時、もしかしたら部活するかも、と大翔は言っていて、両親も賛成というほどではなかったけど、反対もしなかった。
素直で、親の言うことにほとんど反抗しない大翔は、二人にとっては可愛い息子だ。部活動くらいなら問題ないと考えても当たり前。
その息子が突然、予備校に行きたいと言いだした。
「テニスはどうしたんだ?あの先輩はいないんじゃなかったか?」
パワハラ先輩は、そこまで優秀でなかったので、同じ街だけど、中くらいの高校に進学している。多少、噂は聞くけど、高校では逆に先輩にいじめられて、テニス部を辞めたらしい。
報いは来るんだな……と思った大翔だ。
入学した高校のテニス部はあまり強くないけど、その分、のんびり楽しいと聞いている。だから、考えていたわけだ。
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