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「お母さん。入学式で、高校の卒業生の人の挨拶聞いたよね」
入学式には母親だけが出席したので、父親が確認するように視線を向けた。
「ええ。立派な感じの人だったわね。
大翔の十歳上だって聞いたけど、もっと落ちついて見えたわね。周りの人たちも感心してたわ。
やっぱり、この高校はすごいって」
大翔は微妙に笑った。
あの人はすごいと思うけど、大翔や中学からの同級生は完全に普通だ。
勉強は少しできるけど、もっと頭のいい生徒はたくさんいる程度はきちんと分かっている。
「ほぉ、そんなすごい人が出てるんだ。それで、予備校とどんな関係があるんだ?」
立派なOBと、予備校は確かにまったく関係ない。
「俺、あの人みたいに工業デザイナーになりたい。さっき調べたら、県内にその学部のある大学あったんだ。
東京に行かなくていいから入りたいんだけど、偏差値高くてさ。部活してたら無理っぽくて。
だから、一年から予備校に通いたいんだ。絶対途中で辞めないから、お願いします」
大翔は両親に頭を下げた。顔を上げると、二人は笑っていた。
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