第一章 見つけた夢

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 ***  入学した時はそれほど上位でなかった大翔だけど、予備校に行き始めて真剣に勉強をすると、少しずつ成績が伸びてきた。  あの後知ったけど、挨拶した先輩の出身は、大翔が目指す大学。余計に頑張ろうという気持ちになる。  「三谷(みたに)、志望校は変わってないのか?」  一年生だけど進学校だから、担任は、生徒がどこの大学や専門学校を希望なのかは知っている。授業も進学のためのカリキュラムだ。  「はい。変わってないです」  まだまだ希望する大学の学部に入るには偏差値が足りない。実際、予備校でも決していい判定は出ていない。  それでも大翔は、その学部以外はまったく考えていなかった。  「そうか…厳しいが、今の伸びを続けたら可能性はあるぞ」  「え、本当ですか」  初めての進路相談の時、専門学校を(すす)められて拒否した。  担任は少し困ったように相談を終わらせたけど、あれから半年、大翔の努力は確かに形になり始めていたと、すごく嬉しかった。
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