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🐷
🍝🐷(チノトン) **口調曖昧
「ん…ッ、ふッぅ…はぁ…」
真夏の夜、しっかりと冷房で涼しく冷やされた部屋の中で、たった1人の男が 想い人の名前を熱っぽく呟きながら静かに乱れる。
想い人…もといチーノの服とチーノの匂いが微かにほんのりと残ったベッドの衣に、情けなくぐずぐずと身体を擦りつけながら 小さく縮こまって自分の心の隙間を埋めるのだ。
これを所謂 自慰行為、別名"オナニー"と言う。のだが、行為中は胸いっぱいの満足感が染み渡り、行為が終われば虚しさと寂しさが両方で襲いかかるという、とても残酷なものだ。
しかし男という性はこれをやめられないのだから不思議だ。人間は特に性欲が強いと言うのだから仕方の無いことなのだろうが。
「んッ、んっ…ふぁ、う、」
誰が居る訳でもないのに必死に声を抑えて、腰をくねらせ赤色の目をとろん、と熱く溶かすように艶やかにする男は 誰が見ても淫らで美しいだろう。
さて、オナニーの終盤に差しかかるのはそろそろだろうか。
「…は、ッ、ぁう…んぁっ…ちぃ、の、ふぁ…ぅ…っ」
チーノにいつもされるように、
口内に指をいれて、いやらしく舌を翻弄して、
ほのかなピンク色に染まった突起をカリカリと爪で引っ掻きながら、中心のモノを上下に擦る。
擦るたびにキュンキュンと中の奥が疼いて気持ちよくて仕方ないのか。赤い目の男、トントンは早く早くと果てたくて、吸い付くようにモノを擦る速度を増せた。
果てるための材料として、極めつけにチーノの顔や声、表情を思い描く。__後ろからトントンに抱きついて耳元に吐息を吹きかけながら『ここ、ここ気持ちいい?ねぇ』と不敵な笑みを浮かべて己の身体をいやらしく凌辱するチーノの姿を。ひたすら思い描いた。
そうすればトントンは幻想に飲み込まれるように「ッ、はッ、ちー、のッ…ちーのぉ、っんぅぅ…ッも、きもちえ、きもちええ…っキス、キスしたい…っ」なんて何かを塞き止めるストッパーが外れたように、情けなく喘ぎたじろぎ欲望を重ね続けた挙句 果てるのだ。
浅く深く呼吸をして 幻の中のチーノの熱を忘れまいと余韻に浸る。しかしオナニーで全ての体力を使ったトントンは電池が切れたように目を閉じてしまった。
▷▶▷
「(…一体僕は何を見てるんだ)」
外灯りは無くなりすっかり月が朧雲から顔を出す時間帯に、チーノはいた。
チーノは目の前の光景に数分理解ができなかった。
それもそうだ、なぜなら目の前には
下半身、もちろんソレも露わにしたままベッドに横たわり、自分の服を大事に抱いて スースーと健康的な寝息をたてている恋人がいるのだから。
おまけには少しだけ汗ばんでいて 腹をちらりと見せたままで、手とベッドシーツには白濁液が飛び散っている。
…いや、"数分理解ができなかった"という表現の仕方には語弊があった。言い直そう。
"理解してしまえば最後、恋人への愛しさが膨らんで 自分がいない間何をしていたのかと想像力が増し どうしようもならなくなってしまうから"だ。
とは言え結局目の前のことを理解してしまうし想像もするのだが、どうしたことだろう。
ベッドシーツのシワを直したりチラチラと恋人のソレを見たりと露骨にオロオロしくするが時間は進むばかりで、"トントンが下半身を露出して寝ている"ことになんら変わりはない。
冷静な性格の人であれば、早々とパンツとズボンを着せて自分も寝るのだろうが、変なところがウブで抜けているチーノはそれができなかった。
しかしそんなチーノも、数十分経ってようやく整理をし終え とりあえずと、パンツとズボンを着せて飛び散った白濁液をそっと拭き取った。散らばった自分の服は大事そうに抱えられていたから片付けるのはやめておいた。
「(…あ、シーツのシミ……明日洗濯すればいいか)」
とにかくチーノはトントンの隣で眠って、バクバクする心臓を抑えるために朝早く起きたい一心だった。
▷▷▶︎
朝早く起きたい一心、とは言ったもののあれ以来チーノの体と頭は興奮していて なかなか寝つけないでいた。
どうせ寝れないなら。
横になって天井をぼーっと見つめながら、リビングに行ってカフェインがバリバリ入ってる飲み物でも飲んでブロマガ書こうか、と考えていた時だった。
「…の、…」
いきなり布団の中でトントンがモゾモゾと動いて、ボソボソ呟いているものだから まさか起きていたのか と咄嗟に寝ているフリをした。しかし妙だ。よく分からない何かがチーノを手繰り寄せるように動くのだ。
少しくすぐったく感じたチーノは それから逃げようとして無意識に体が動いていた。
それでも動くから、彼は吹っ切れるように身体をぐるりと横にして(トントンと向かい合うように)目を開けた。
「トン…ト…?!」
トントンの名前を呼ぼうとしたがそれはすぐにやめた。
「ちー、の、…ちーの……」
幼い赤子のようにぐずぐずとチーノの胸元に頬を擦り寄せて、腕は背中へと延びていた。
まるてチーノがいることに安心しているかのように その寝顔はとても幸福そうでチーノも幸せになる。
その時トントンに触れられた部分と心が、燃えているのではないかというほど熱くなった。
ギューンと胸がしまって愛しさが溢れてしまう気がして耐えきれなくなったチーノは声を出して、思いっきりトントンを抱きしめた。
「うぅ、俺のお嫁さんなんでこんな可愛いんや…」
ひっそりとうるうる目を濡らしながらおっさんのようなうわ言を並べる。
終始ニヤニヤが収まらないチーノはなにかと思えば、ポケットにしまってあったスマホを取り出しカメラアプリを手慣れた様子で押した。
「(こんな可愛い寝顔、撮っとかないと勿体ないよな)」
今の時代にはスマホのカメラアプリなんていうご立派に便利な機能があるのだから、この際だ。せっかくだし使おう。いや、寧ろこのために生まれてきたのではないか?
ぶつぶつと心のなかで独り言と返ってくることのない疑問を繰り返しながら、震える手でシャッターを押した。
「ふふ、可愛いなぁ…」
愛しさから込み上げてくる熱を放出するために、そっと耳元に息を吹きかけてから、大好きやで。寂しい思いさせてもうてごめんなぁ。と寝ている相手を甘やかすようにして囁き額に可愛らしいキスをした。
心做しかその頬は赤く苺のように染まっていたような気がする。
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